<Header>
<Author: 宋之問>
<Title: 早發始興江口至虛氏村作>
<Format: 格式不明>
<Year: 1964>
<BookName: 唐詩選　上>
<Translator: 斎藤晌>
<style: 現代文無假名>
<style2: 日本現代譯文無假名標注>
<TranslatedTitle: 早に始興の江口を發して虚氏村に至る作>
<BookPage: 284>
<UsedPage: 1>
<Feature: 1, 4>
<End Header>
<Poem>
候曉踰閩嶠，
乘春望越臺。
宿雲鵬際落，
殘月蚌中開。
薜荔搖青氣，
桄榔翳碧苔。
桂香多露裛，
石響細泉回。
抱葉玄猿嘯，
銜花翡翠來。
南中雖可悅，
北思日悠哉。
鬒髮俄成素，
丹心已作灰。
何當首歸路，
行剪故園萊。
<End Poem>
<Translation>
夜が白むのを待って、はやばやに始興江のほとりから出發し、閩のけわしい嶺を越えて、春めいた好季節に歩をはやめながら、かなた廣州(廣東)の越秀山によせてきずかれた越王臺の方角を眺めた。昨夜から垂れこめていた雲は、大鵬の飛んでゆくという遠い空のかなたに消え、まるで貝のなかから吐き出された眞珠のような月がぽっかり殘っているのが見えた。
山道には茂りに茂っているかずらのたぐいが微風にゆれながら、まるで空氣をあおあおと染めてゆくようだし、この地の特産の桃郷の木が大きい葉を四方にひろげて、みどりの苔の上においかぶさっている。桂の花が露もしとどにぬれて強い芳香をはなっているかと思えば、道ばたに細い泉が湧き出て、岩のあいだにさらさらと音をたてている。密林の葉がくれに黒い猿がさけび聲をあげているのが聞こえ、目の前には、花をくわえたかわせみがさっと身をかえして飛び過ぎる。この南國の風物もなかなかわるくない。人をたのしませてくれる。しかし、北の方を戀いしたう氣持ちは、日に日につのるばかりで、やるせないかぎりだ。この流謫の憂目を見てから、黑かった髪も急に白くなってしまって、熱誠にあふれたわたしの心もひえきった灰になってしまった。故郷へ歸路について、やがては人手がないために、雑草がおいはびこっているわが家の庭の手入れをすることができるのは、いつの日のことだろうか。
<End Translation>
<Formatted Translation>
夜が白むのを待って、はやばやに始興江のほとりから出發し、閩のけわしい嶺を越えて、
春めいた好季節に歩をはやめながら、かなた廣州(廣東)の越秀山によせてきずかれた越王臺の方角を眺めた。
昨夜から垂れこめていた雲は、大鵬の飛んでゆくという遠い空のかなたに消え、まるで貝のなかから吐き出された眞珠のような月がぽっかり殘っているのが見えた。
山道には茂りに茂っているかずらのたぐいが微風にゆれながら、まるで空氣をあおあおと染めてゆくようだし、
この地の特産の桃郷の木が大きい葉を四方にひろげて、みどりの苔の上においかぶさっている。
桂の花が露もしとどにぬれて強い芳香をはなっているかと思えば、道ばたに細い泉が湧き出て、岩のあいだにさらさらと音をたてている。
密林の葉がくれに黒い猿がさけび聲をあげているのが聞こえ、目の前には、花をくわえたかわせみがさっと身をかえして飛び過ぎる。
この南國の風物もなかなかわるくない。人をたのしませてくれる。
しかし、北の方を戀いしたう氣持ちは、日に日につのるばかりで、やるせないかぎりだ。
この流謫の憂目を見てから、黑かった髪も急に白くなってしまって、熱誠にあふれたわたしの心もひえきった灰になってしまった。
故郷へ歸路について、やがては人手がないために、雑草がおいはびこっているわが家の庭の手入れをすることができるのは、いつの日のことだろうか。
<End Formatted Translation>